沈水カルスト地形がつくりだした美しい南島瀬戸(撮影/Mana Nomoto)
沈水カルスト地形がつくりだした美しい南島瀬戸(撮影/Mana Nomoto)

 かつて「無人島(Bonin Islands)」として世界に知られた小笠原諸島。その豊かで独特な自然や生態系が認められ、2011年6月29日に世界自然遺産に登録されてから今年で5年。この7月から新しい船が導入され、東京竹芝桟橋から父島までは片道24時間に短縮された。この美しい島々のありのままの姿を知り、未来へとつないでいくことが、いま求められている――。小笠原に住む写真家、MANA 野元学氏の写真と文章で紹介する。

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 南北400キロにわたって点在する30余りの島々から形成される小笠原諸島は、4800万年前に始まった太平洋プレートの沈み込みと、海底火山活動によって島が誕生してから、一度も大陸と陸続きになったことがない、大海原にぽつんと存在する「海洋島」だ。

 大海を越えて運良く辿り着いた生物が、悠久の時の中で環境に適応するように進化を遂げた結果、小笠原諸島でしか見ることができない、固有の生物の宝庫となった。この特異で貴重な生態系が評価され、5年前、世界自然遺産に登録された。

 内地(日本本土)が梅雨入りをすると、亜熱帯の島・小笠原の雨期が明け、本格的な夏が訪れる。すべてのものがキラキラと輝く美しい季節の始まりだ。真っ青な空には太陽が燦々と輝き、どこまでも透明で深い青色をした“ボニンブルー”の海では、イルカたちが自由に泳いでいる。亜熱帯の森やジャングルでは固有の植物の息吹を感じる。

 東京から南へ千キロ。太平洋の真っただ中に浮かぶ「都内」の島には、世界に誇れる豊かで美しい自然の楽園があった。

週刊朝日 2016年7月15日号