木村さんは取材で繰り返し、訴えた。
「男として誰かに認めてほしかった。母性がない男が、子どもの面倒を四六時中見るということがいかに大変か、身に染みました」
妻の所得で家計を支え、夫が家事・育児に専念する「専業主夫」。「イクメン」などとともに、昨今注目される言葉だが、2014年度の厚生労働省調査によると、妻が扶養する夫の数は11万人。96年度から約3倍に増加しているとはいえ、夫に扶養される妻921万人に対して1.2%と圧倒的に少ない。
“母性”に対する誤解と子育てへの認識の甘さはともかく、木村さんのケースは、半端な覚悟で主夫を選択すると、家庭を崩壊させるという典型例だろう。
妻を支えると言いながら、実際は支配下に置こうとして家庭内で強権を振るう夫もいる。専業主夫の仮面を被った“DV夫”だ。
3度の離婚を経験し、自身のこれまでの壮絶体験を作品に綴る、漫画家で作家の内田春菊さん(56)。
「3人の夫はみんな収入がほとんどなく、私の稼ぎで暮らしていました。子どもの面倒を見たり家事を手伝ってくれたりと、嫌なことばかりではなかったのですが……」
問題は、内田さんの仕事や交友関係への嫉妬が激しくなることだった。新しい仕事で交友関係が広がることを極端に嫌ったり、すぐ浮気を疑ったり。
「表向きは応援するふりをして、鬱憤がたまると精神的な攻撃を仕掛けてきたり、とにかく追いつめられた」
特にひどかったのが2番目の夫だ。
「私が売れ始めたら勝手に仕事を辞めてたんです。私の稼ぎで自分勝手に散財しても全く罪悪感を持たない。収入が下がると文句だけは言うけど、決して褒めたり労ったりしてくれることはなかったですね」
最終的に離婚の慰謝料なども含め、「1億数千万を持っていかれた」という内田さんは、当時の生活をこう振り返る。
「私は依存され、搾り取られていただけだったんです」
さて、高知・高島夫妻の結婚生活はどうなるのか。
30日の会見で、「いまは妻としての責任があると思う」と話しながらも、「それ(離婚)もその中(選択肢)の一つ。しっかり現実を見て、今後の彼の動向を見て、判断しなければならないと思います」と、離婚の可能性を示唆した高島。夫婦問題研究家の岡野あつこさんは、「本当に愛しているなら、(高知が)更生するためにも別れるべきだ」と釘を刺す。
「高島さんは、もっと早く高知さんを突き放すべきだった。逮捕された今が、最後のタイミング。ここを逃すと、また彼が甘えて拠り所にしてしまう。それはもはや、妻ではなく母親です」
夫の甘えと依存が、大きな不幸を招くこともある。「家庭で君を支えるよ」。その言葉を気安く口にする男性がいたら、慎重に見極めたほうがよさそうだ。
※週刊朝日 2016年7月15日号より抜粋