頭痛に悩む人は多い(※イメージ)
頭痛に悩む人は多い(※イメージ)

 頭痛に悩む人は多い。10~30代から始まり、生涯付き合う人もいる。片頭痛はおもにひどい痛みと吐き気を伴い、日常生活に支障をもたらす。

 自分が片頭痛かどうかを見極める方法として、埼玉精神神経センター埼玉国際頭痛センターでセンター長を務める坂井文彦医師はこう説明する。

「片頭痛は、基本的に動くと痛みが増します。落ちたものを拾うのもつらいほどです。痛みがあるときに体操をしたり体を動かしたりして痛みがひどくなるようなら、片頭痛の可能性が高いでしょう」

 片頭痛では、頭の片側のこめかみから目にかけて、ズキンズキンという脈打つような痛みの発作が、数時間から数日続くこともある。頭痛以外の症状では、吐き気やおう吐のほか、光や音、においに対して過敏になる。肩こりやめまいを伴うこともある。

 京都市に住む事務職の鈴木美恵さん(仮名・46歳)は、20代からひどい頭痛に悩まされていた。痛みがあるときは、動くと痛みが悪化するので、体を動かせずに寝たきりになる。吐き気を伴うこともあった。肩こりから来る頭痛と思っていたが、38歳のときに、頭痛と吐き気がひどくて入院したのをきっかけに片頭痛と診断された。

 片頭痛の治療の基本は薬物療法だ。痛みが起きたときに飲む治療薬と、痛みが出る前に飲む予防薬がある。

 痛みが起きたときに服用する治療薬がトリプタンだ。2000年ごろから国内で発売され、治療は劇的に変化した。それまでは、すでに起きた痛みを鎮痛剤で抑えるしかなかったが、トリプタンはそもそも痛みが起こらないように働きかける。

「片頭痛では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンが低下し、血管を拡張させて痛みを引き起こすカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が作用することで痛みの発作が起こります。治療薬のトリプタンは血管や三叉神経にあるセロトニン受容体に作用してセロトニンを上昇させるように働くので、結果的にCGRPを抑えて痛みを抑えます」(坂井医師)

 トリプタンは、片頭痛のメカニズムに働きかけて痛みを引き起こさないようにするが、一方で痛み止めの作用はない。そのため、トリプタンに加えて鎮痛剤を服用することもある。

 前出の鈴木さんは、頭痛が起きたときに、かかりつけの医師から処方されたトリプタンを服用していたが、月に5~10回は痛みが起きていた。

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