津田大介「情報検証こそ『紙』メディアのプライド」

ウェブの見方 紙の味方

津田大介

2016/07/04 07:00

 問題の記事は6月16日の夕方、ウェブ版にアップされた「TBS番組『街の声』の20代女性が被災地リポートしたピースボートスタッフに酷似していた?! 『さくらじゃないか』との声続出」というもの。15日の舛添都知事の辞任発表を受けて東京都内でTBSの街頭インタビューに応じた女性が、熊本地震で現地リポートをしたピースボート災害ボランティアセンターのスタッフと似ており、TBS側が都合のよい意見を街の声として言わせる“やらせ”を行ったのでは、とネット上で話題になった。これを産経新聞はセンターに取材せずに報じたのだ。

 しかし、似ているとされた女性はインタビュー時、熊本で支援活動をしていた。センターから抗議を受けた産経新聞は謝罪してすぐに記事を削除。代わりにセンターの抗議文と回答書を掲載した。

 ツイッターやブログのコメントを識者本人に確認を取らず記事として掲載するのも、ネットのデマを信じて拡散するという報道機関としてやってはいけないミスをするのも、「他社に先駆けてできるだけ早く記事を量産したい」「楽をしたい」という気持ちが裏側にあるのではないか。信頼性に乏しい情報であっても扇情的な情報であれば大量に拡散してしまう今だからこそ、「紙」メディアはプライドを持って情報の検証に力を注いでほしい。それがネットと差別化するための唯一の策なのだから。

週刊朝日 2016年7月8日号

津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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