知花くららが学ぶ“大人の余裕”とは?
知花くららが学ぶ“大人の余裕”とは?

 モデルの知花(ちばな)くららさんが、「朝日歌壇」の選者である永田和宏先生に短歌を詠む秘訣を聞く本誌連載『知花くららの「教えて!永田先生」』。今回は歌で“大人の余裕”を表現する方法を聞いた。

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知花:先生、今月はリフレインについて教えてください。一つの歌の中で同じ言葉を繰り返す技法なのはわかるんですけど、どう使っていいのか。同音異字もリフレインになりますか?

永田:そうなります。続けて繰り返される場合もあるし、間を置いて繰り返される場合もある。

知花:31文字しかないのに、文字数がもったいない気がしちゃうんですけど、リフレインを使った歌のよさは?

永田:不経済ではあるけど、一つには、伝えられる情報量を犠牲にしても、感情の高ぶりや思いが強調されることかなあ。永井陽子という不思議な歌人がいて、彼女の歌にはリフレインがすごく出てくる。「ゆふぐれに櫛をひろへりゆふぐれの櫛はわたしにひろはれしのみ」という歌は、夕暮れに櫛を拾ったことしか言っていないんだけど、何かしんと悲しい感じがしますね。あと「ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり」という歌があって。

知花:それ、私が最初に覚えた歌です。大胆で、すごくいい歌ですよねえ。

永田:うん、もう超絶技巧だけど、真ん中に鏡を立てると、上の句と下の句が鏡像みたいになっているんだよね。アンダルシアのひまわりは遠くて現実に見ることはかなわない、でも行きたい、諦めきれないという切迫した強い思いが伝わってくる。

知花:それに、何だか口ずさみたくなります。

永田:そうね。そもそも短歌の始まりは文字に書いて読むものじゃなくて、口に出して詠み合うものだった。だから古代歌謡はリフレインが多いんですよ。日本で一番古い歌と言われている「八雲立つ出雲八重垣妻籠(つまご)みに八重垣作るその八重垣を」もリフレインだから。

知花:八重垣だらけ(笑)。私たち初心者がうまく取り入れるコツや注意する点はありますか?

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