林:ハベルのフルネームが出るところが、さすがですね。彼らは故国についての美しい文章を書くんですよね。国民はだいたいそれでやられちゃう。

島田:バルガスリョサ(ペルーの作家)はかつてフジモリと大統領選を戦いましたしね。文学はナショナリズムを盛り上げるのに役立つ一方で、ナショナリズムを批判したり、権力に抵抗したりするという伝統も根強い。そしてポピュリズム的支持の中でリーダーになった人の言葉の軽さというのは、出来の悪い大衆文学ですね。広告会社とのつながりが強いとそうなる。「一億総活躍社会」なんて、ほんとにセンス悪い。「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」。本質隠しにメルヘン使うなと言いたい(笑)。

林:作家で政治家になりたがるのって、なんでしょうね。

島田:承認願望をどこで満たすのか、ゴールをどこに設定しているのかということでしょうね。政治的野心という言い方もしますけど。

林:島田さんはいかがですか? 都知事選に立候補しちゃおうとか?

島田:私ですか? まさか。

週刊朝日  2016年7月8日号より抜粋