NHKにはきっと「朝ドラマニュアル」があるにちがいない。そして、この「とと姉ちゃん」は、見事にそのハウツー通りだ。まずタイトルの最後には「ん」を付ける。「カーネーション」「あまちゃん」「ごちそうさん」「花子とアン」「マッサン」のように。

 ヒロインは少女時代、高い所に上って、大騒動を起こしましょう。できれば水にも飛び込みたい。地方を舞台に始まるけれど、しばらくしたら東京(もしくはその近郊)へ移動、新キャストを大勢ぶっこむこと。イケメン注入も忘れずに。

 ストーリーをひっかき回すお騒がせキャラも欠かせない。「ゲゲゲの女房」ならイタチ(杉浦太陽)、「梅ちゃん先生」なら陽造叔父さん(鶴見辰吾)、今回は鉄郎叔父さん(向井理)。必ず怪しい儲け話で、ヒロイン一家を窮地におとしいれましょう。戦争エピソードは、重要なポイント。白いタスキに割烹着の大日本婦人会が、ヒロインに説教する場面は朝ドラのハイライトなんだから(嘘)。

 こんなにマニュアルを消化する「とと姉ちゃん」は、優等生・朝ドラだ。ただし、そのせいか、話がまったく盛り上がらないのは、どうしたもんじゃろのう~。

週刊朝日 2016年7月8日号