慢性硬膜下血腫、気がつきにくいケースも(※イメージ)
慢性硬膜下血腫、気がつきにくいケースも(※イメージ)

 おもに頭部外傷をきっかけに起こる慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)の罹患者が増えている。高齢者やアルコール多飲者に多いが、気がつきにくいケースもあるという。

 慢性硬膜下血腫は頭部を転倒などによりぶつけた後、頭蓋骨のすぐ下の硬膜と脳(くも膜)とのすき間で徐々に出血して血液がたまり、血腫ができる病気だ。頭をぶつけて3週間から2カ月後に発症することが多い。

 血腫が大きくなると脳が圧迫され、さまざまな症状が起こる。「もの忘れ」や「意欲の低下」はその代表例で、認知症と間違われるケースもある。慢性硬膜下血腫の年間発生頻度は10万人につき1~2人といわれていたが、最新の調査では70~79歳で76.5人、80歳以上では127.1人と急増している。

 埼玉県在住の田中幸一さん(仮名・71歳)は2016年4月、自宅で転倒し、顔面を打撲。近くのクリニックで頭部CT(コンピューター断層撮影)による画像検査を受けたが、異常は認められなかった。

 しかし、約2カ月後、ハイキングに出かけた際に左足がスムーズに動かなくなり、翌日には尿失禁も起きたため、再度、クリニックを受診した。頭部CTを撮影した結果、右側の脳に血腫が見つかり、埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科を紹介された。

 硬膜下血腫には急性と慢性がある。急性は外傷の衝撃の直後に脳の表面の太い血管が切れてどんどん出血する。さらに脳が圧迫されて血液の循環が悪化し、意識の低下などが起こる。緊急の開頭手術が必要になるケースも多い。

 これに対して慢性硬膜下血腫は外傷をきっかけに、硬膜と脳の間に被膜ができる。被膜にできた新生血管(通常は存在せず、新たに発生する異常な血管)からじわじわと血液がしみだし、たまって血腫となる。

「大きな血腫になるまでに時間がかかるため、症状が出るのもゆっくりです。頭部外傷の直後、病院で『異常はない』と言われても、しばらくは経過観察をしてください」(同科運営責任者・栗田浩樹医師)

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