田原総一朗「iPS細胞と超高価薬が突きつける『生命の値段』問題」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「iPS細胞と超高価薬が突きつける『生命の値段』問題」

連載「ギロン堂」

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iPS細胞などの登場で倫理観や法規制を考える必要がある(※イメージ)

iPS細胞などの登場で倫理観や法規制を考える必要がある(※イメージ)

 それから1年半が経つが、手術に伴う合併症も起きず、移植した細胞が拒絶反応も起こさずに定着している。つまりiPS細胞による人間への移植は成功したわけだ。

 すでにパーキンソン病や心臓病、肝臓病、膵臓(すいぞう)病など、さまざまな難病に対してiPS細胞による移植が進められようとしている。今後は、従来の手術中心から、iPS細胞による再生医療が主になっていきそうだ。武田薬品工業をはじめ、日本の製薬会社がいずれもiPS細胞がらみで新薬の開発に乗り出している。

 だが、医療の発達による難問も生じてくる。再生医療ではないが、いま肺がん治療薬「ニボルマブ」が難しい問題を生じさせている。「ニボルマブ」は画期的な肺がん治療薬だが、年間に3500万円(26回投与)かかる。日本の肺がん患者のうち5万人が使えば、1年間に薬代だけで1兆7500億円になる。こうなると医療保険制度は破たんをきたし、すべてが患者負担となると、低所得者は「ニボルマブ」の治療が受けられないことになる。

 これまでは、人間の生命が何よりも重要で、生命を永らえるためにあらゆる手段を講じるのが当然だということになっていた。だがiPS細胞による移植、そして「ニボルマブ」のような超高価薬がどんどん登場してくると、従来は必要でなかった倫理観や法規制などを考えなければならなくなるのではないだろうか。

週刊朝日 2016年6月24日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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