岸田文雄きしだ・ふみお/1957年生まれ。早稲田大学卒。広島1区で当選8回。外相、宏池会8代目会長。祖父(正記)、父(文武)と3代続けて宏池会に所属。沖縄・北方対策担当相、規制改革担当相、自民党国会対策委員長などを歴任(撮影/写真部・東川哲也)
岸田文雄
きしだ・ふみお/1957年生まれ。早稲田大学卒。広島1区で当選8回。外相、宏池会8代目会長。祖父(正記)、父(文武)と3代続けて宏池会に所属。沖縄・北方対策担当相、規制改革担当相、自民党国会対策委員長などを歴任(撮影/写真部・東川哲也)
大下英治おおした・えいじ/1944年、広島県生まれ。「週刊文春」のトップ屋として活躍し、執筆活動に入る。政治、経済、芸能、闇社会まで幅広い著述活動を展開し、著作は400冊以上。近著に『田中角栄 巨魁伝』(朝日文庫)(撮影/大嶋千尋)
大下英治
おおした・えいじ/1944年、広島県生まれ。「週刊文春」のトップ屋として活躍し、執筆活動に入る。政治、経済、芸能、闇社会まで幅広い著述活動を展開し、著作は400冊以上。近著に『田中角栄 巨魁伝』(朝日文庫)(撮影/大嶋千尋)

 来年60周年を迎える名門派閥、宏池会を率いる岸田文雄外相(58)。歴史的な米国・オバマ大統領の広島訪問の立役者となり、ポスト安倍としても注目されている。「現憲法に愛着を持つリベラル集団」のプリンスは今後、保守本流の意地を見せられるのか?「週刊文春」のトップ屋として活躍し、幅広い著述活動を展開する大下英治氏が話を聞いた。

*  *  *

大下:岸田さんが古賀誠元幹事長から引き継いだ派閥「宏池会」が来年、60周年を迎えます。保守本流の名門ですが、もともとはどういう縁だったんですか?

岸田:私が生まれた昭和32年、宏池会が結成されたのですが、私の祖父も立ち上げたメンバーでした。以降、3代にわたり、宏池会です。過去には池田勇人、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一と歴代4人の首相が輩出しましたが、最近は政権から遠ざかっておりますね。かつて先輩方がいかに努力し、苦労し、成功したかを今、若手(当選2回以下)が中心になって勉強会で学んでいます。来年に向けて歴史を振り返り、政策を提言して60周年を意義ある年にしたいですね。

大下:宏池会らしさとは何でしょうか?

岸田:昭和30年の自民党結成に合流した吉田茂自由党の流れを深く継いでいる、「言論、表現の自由」を大事にするリベラルと言われる政治集団で、ハト派とも言われています。さらに宏池会の先輩方は日本国憲法の制定の現場にかかわった方が多いので、宏池会としては現憲法に対する愛着というのはあると思います。

大下:改憲に対するご見解はいかがですか?

岸田:われわれは改憲に反対というのではなくて、愛着があるから、時代の変化にも対応してよりいいものに変えていこうというスタンスです。もともと現憲法そのものを否定するスタンスではないということです。

大下:今は憲法改正というと、岸信介元首相の孫でもある安倍首相というイメージがありますね。

岸田:その系譜は清和会へとつながり、そして吉田自由党の流れは、宏池会と平成研(旧田中派)につながっていると思います。

大下:宏池会はリベラル、平和主義ですね。

岸田:はい。安全保障については、軽武装、経済重視でいかないと、戦後、国民は食べていけなかった。そして日中国交回復も深く関わりました。

大下:田中角栄さんと大平さんですね。

岸田:そうですね。宏池会の先輩方は韓国との関係も含め、近隣諸国との関係において具体的に汗をかいた。政治スローガン、イデオロギーに振りまわされるのではなく、国民の声を聞きながら、極めて現実的な対応をしていくというのが宏池会で、それが保守本流の基本的なスタンスだと思っています。

大下:歴代の宏池会の政権の特徴としては「寛容と忍耐」でしたね。

岸田:はい。池田内閣のスローガンでした。宏池会の政権の特徴としては、権力の使い方に対し、極めて謙虚でした。ですから、われわれも寛容と忍耐を受け継いで、丁寧に謙虚に権力を使わなければならないというスタンスを大事にしています。

大下:安倍政権との距離感はどうでしょう。

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