「あれではダメです。第三者委員会とは言えません。どうみても舛添弁護団です」

 とバッサリ切り捨てるのは、弁護士や大学教授ら有志のグループでつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」のリーダーを務める久保利英明弁護士。

 どこがダメなのか。

「まず、疑惑の対象である舛添さんが依頼者として弁護士を選任し、報酬を払うこと。第三者の体をなしていない。弁護士としては、報酬を支払ってくれる顧客の不利になる行為はできません。今回の『第三者』は、この点からわれわれの格付けの対象にもなりません」

「つまり舛添さんは、弁護人意見書をカネで買ったのです」。久保利弁護士は続ける。第三者委員会は、(1)メンバーの指名(2)報酬の支払い元(3)報告書の提出先が当事者とは切り離されたところで成立しなければ、公平な調査ができないという。2008年、舛添氏は厚生労働大臣として「消えた年金問題」に取り組み、第三者委員会を設置、陣頭指揮をとっていた。

「私は、その第三者委員会のメンバーとして調査を行いました。報告書は厚労省や社保庁の責任に踏み込み、社会的にも評価を受けた。舛添さんは『正しい第三者』の本質をよく理解していたはずです」(久保利弁護士)

 当時の調査に携わった関係者はこんな証言をした。「今回の報告書を読むと、舛添さんは各方面に食事や物を差し入れ、気配りのできる方のようですね。委員会のメンバーはおろか、新聞紙を敷いて仮眠をとっていた厚労省職員もいたがコーヒー1杯の差し入れをしたとの話も出なかった」

 報告書に対し、久保利弁護士は「一文の価値もない。店への裏取り、出席者の確認や面談もしていないから、弁護団意見としても機能しません」と手厳しい。とりわけ「違法性はない」と判断した点は疑問だという。

「違法性はありますよ。『第三者』の論理は、政党交付金の使途を規制する条項がないから、違法ではないとするものだが、政党交付金の目的に違反しています」

 政党助成法には、「政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする」と明記されている。

「何に使ってもいいとはひとことも言っていません。お金の出どころは国庫であり、税金です。健全な政治活動のために使うのは当然の前提であって、支出にも開示の規定があります。法律に条文がないから違法ではない、という詭弁(きべん)は論外です。そんな議論が通るならば政党交付金は廃止すべきです」

週刊朝日 2016年6月24日号