そんな妻と夫がお互いの毒殺を狙う晩餐の場面が、もう最高。とりあえず毒入りが確定しているのは、スペアリブとアクアパッツァとアヒージョ。しかし他の食材も毒入りなんじゃないかと、疑心暗鬼な英明。おそるおそるプチトマトをパクリ。「セーフッ!」(英明の心の声)。生ハムをパクリ。「セーフッ!」。英明のリアクションが、ベテランひな壇芸人ばりに冴えわたる。

 すっかり気がおおきくなった英明は、妻に毒入り料理をすすめる。「さぁ食え! アドキシン(毒の種類)を食らええええ! 死ねえええええ!」。心の声が顔に出過ぎだから、英明。もちろん特殊部隊出身(違います)の妻が、そんな他愛ないトラップに引っかかるわけもない。

 まずは「ごめんなさい、私、あなたを殺そうとしてたの」とネタばらしして、英明に第一どっきり攻撃。続いて、呼び寄せた愛人が毒料理食らって死亡する第二どっきり。ここでもう、英明の顔面と精神が崩壊。罪の意識から、愛人の亡霊を幻視し、泣きながら部屋にコーヒー豆を撒きまくる。節分か。さらに第三のどっきりで、すべては妻の偽装工作、愛人も無事生きていたことが判明する。

 とにかくこのドラマ、いちいち騙される英明の単純さ加減が、すがすがしい。今までただの筋肉馬鹿だと思っててごめんね。もっと晴れわたるように純度の高い馬鹿だったよ、ゴーン・英明がまぶしい。

週刊朝日  2016年6月24日号