「手術は無理で、生命の安全を優先するために抗がん剤を使った治療から始めます」

 こう話すのは、湘南記念病院かまくら乳がんセンター長の土井卓子医師。

 麻央に病気が発覚後、速やかに治療を開始したとしたら、1年半以上にわたって抗がん剤を使っていることになる。乳がんは比較的、抗がん剤が効きやすく、「本来ならそこまで長く続けることはない」(富永医師)というが、一方で、長期的な抗がん剤治療ができるのは乳がんならでは、とも言える。

 土井医師は言う。

「乳がんの薬物治療は日々進化し、種類も治療法も豊富で、新しい薬も登場しています。スタンダードな治療が効かなかった方に“血管新生阻害薬”という薬を使って、がんが小さくなったケースもあります。トリプルネガティブの乳がんに多い、遺伝子の変異を持った“遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)”なら、まだ日本では未認可ですが、“PARP(パープ)阻害剤”という薬もあります。あきらめず希望を持ってほしい」

週刊朝日  2016年6月24日号