津田大介「米国に見る、新聞の生き残り策」

ウェブの見方 紙の味方

津田大介

2016/06/13 16:00

 そんな中、注目したいのは米国の3大紙の取り組みだ。アマゾン社のジェフ・ベゾスCEOに買収されたワシントン・ポストは買収以来ネット記事を大幅に増加。現在1日1200本の記事をコンスタントに投入する物量作戦に出ている。ネット上での存在感を高めることで、広告収入を確保するという戦略だ。

 ロサンゼルス・タイムズは多くの新聞社が経費節減を進めるのと逆行するように、今年3月、新興国を中心に七つの海外支局の開設を決めた。娯楽に強い都市にパイプをつくることで、新たな広告主を開拓する狙いがあるという。

 ニューヨーク・タイムズはデジタル化を進める(既に同紙は紙の部数をデジタル版購読者のほうが上回っている)一方で、同紙のブランド力を生かし、質の高い教育や旅行、飲食事業などに進出することで生き残りを懸けている。

 3大紙が目指している方向や手法はすべて異なる。しかし、今後の新聞の未来を考えるうえではどれも注目に値する取り組みだ。米国の大手新聞社はプライドを捨て、ベンチャー企業のような精神で勝負に出ている。翻って日本の新聞社はどうだろうか。まだ体力のあるうちに米国の新聞社のような試行錯誤ができるかどうかに日本の新聞社の未来はかかっている。

週刊朝日  2016年6月17日号

津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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