妻:生意気にもいつも最初に、作品にも演奏にもいろんなこと言ってましたものね。

夫:ですから、この人の評論は僕をけなすことから始まったんです(笑)。

妻:なんてことを言うんでしょう。「けなす」んじゃありません。批評です(笑)。

夫:音楽の方向性とともに、われわれはものを食べるということがとても好きで、これに興味のない人だったら、ここまで続かなかったでしょうね。僕はパリでの一人暮らしが長かったでしょう? 留学1年目は見よう見まねで料理したんですけど、2年目からは朝昼晩外食で、外食のオニになったんです(笑)。パリのレストランガイドが書けるくらい、外食を楽しみました。

妻:今でも、外食が多いですね。「家で作れ」と言われないのがありがたいです。私は普通の家庭で育っていますから、パリ時代も自炊していましたし、家でリラックスしたいときは作るんですけどね。演奏会から帰って、急いで台所に立とうとすると、「いいよいいよ」って、言ってくれるんです。

というわけで私はあまり作らないで済んでいるのですが、「それはあなたの料理がおいしくないから」とは私の母の言です(笑)。

夫:そんなことないよ。

妻:ね。肉じゃがも焼き物もおいしいですよね(笑)。

週刊朝日  2016年6月17日号より抜粋