西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、今年の交流戦は昨年大失速したDeNAに注目しているという。

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 プロ野球は交流戦に突入した。今年で12年目を迎える交流戦だが、過去パ・リーグ球団が9度も1位となっている。リーグ間の勝敗で見ても、昨年はパが61勝44敗3分けと大きく勝ち越した。セ・パの実力の違いが多方面から指摘されたが、今年はセの巻き返しを期待したいよね。

 中でも、昨年の交流戦で3勝14敗1分けと大失速したDeNAには注目している。昨年は当時の中畑清監督が「ジェットコースターみたい」と評した通り、大型連勝も大型連敗もあった。球宴前の前半戦を首位で折り返しながら、最終的にリーグ最下位に終わった。だが、今年は少々違った期待を抱かせてくれている。理由は投手陣の充実だ。

 ドラフト1位ルーキーの左腕、今永昇太の好投に加え、2年目の左腕、石田健大も5月に4戦4勝で防御率0.33。右投手もG・モスコーソ、井納翔一らが安定し、先発陣が6枚キッチリいる。6連戦が続く交流戦でも、質の高い先発ローテーションを維持できる。誰かがアクシデントに見舞われても、実績のあるベテラン選手がいる。2軍に久保康友、さらに42歳で投手コーチ兼任の三浦大輔も控える。大型連敗に陥る可能性は格段に低いとみていいだろう。

 とくに今永については、キャンプ中から投球フォームと直球を見て、素晴らしいと思っていた。体の使い方が柔らかく、腕もしなって出てくる。一番感心するのは、投球フォームに力みがまったくないことだ。リリースの瞬間だけ力が入る形だから、ロスが少ない。新戦力の先発投手は開幕から飛ばし、6月に疲労をため込んでしまうが、今永のフォームなら、疲労度は深刻にはならないはずだ。空振りを取れる速球の質は、ソフトバンクの和田毅の速球に似ている。

 
 救援陣もセットアッパーの3年目の三上朋也、クローザーの2年目の山崎康晃が安定している。先発、救援ともに駒がそろった印象だ。投手陣がよければ、試合運びも安定してくる。打線も確実に1点を取る野球ができるようになり、好循環になるだろう。

 ラミレス監督が開幕から仕掛ける走塁面も含めた積極策は、選手を前向きにさせている。私も西武監督時代、松井稼頭央や高木大成らの若手をレギュラーに据え、ミスを過度に責めることはしなかった。ラミレス監督も、積極的なプレーの結果に生じたミスを責めている感じはしない。若い選手が思いきってプレーできる土壌を作り上げている。若手が躍動すれば、チームは活気づく。4番には、筒香嘉智という太い柱もいる。

 大切なのは、経験値が浅い選手たちが、自滅する形で負のスパイラルにはまらないことだ。投手陣が抑えても、打線が打てずに負けることもある。そんなときに自分のリズムを崩さないことだ。たとえ2、3試合打たれたとしても、自分の投球の軸だけは崩してはいけない。野手も同じだ。

 投打の誰かが不調になったときは、ベテランの出番である。打線なら石川雄洋や梶谷隆幸といった中堅が力を発揮してほしい。若手だけの力で勝ちきれるほど、ペナントは甘くはない。

 DeNAは7~9日にヤフオクドームでソフトバンク戦に臨む。この3連戦で勝ち越すようなら、大きな自信になるはずだ。

週刊朝日 2016年6月17日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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