「食べ始めから30~60分後を目安に、ウォーキングなどで体を動かすと効果的です。糖尿病治療では患者さん自身が血糖値の推移を見て、何をしたら良いのかを知る。そして医師から適切なアドバイスを受けることが重要です」(西村医師)

 浅岡さんは退院後も食後の運動はもちろん、週末には水泳も取り入れた。1年後、HbA1c値は5%台をキープし、BMIも25まで低下した。薬は必要なく、今も病院の定期的な血液検査だけですんでいる。

 浅岡さんは「今後も、入院中のような食事と運動中心の規則正しい生活を心がけていきたい」と明るい表情で話した。

 一方、治療のもう一つの柱となる「食生活の改善」で、西村医師が患者に伝えているのはベジタブルファースト。すなわち食事の始めに野菜を食べることだ。

 正確には野菜のほか、きのこや海藻など食物繊維が豊富なものを最初に食べる。次に肉や魚といった脂肪やたんぱく質をとり、白米などの炭水化物(糖質)は最後に食べる。

 最初に腸に食物繊維をためておくことで、後から入ってきた炭水化物を食物繊維が包み込む。すると、炭水化物からの糖質の吸収が遅くなり、食後の血糖値の上がり方が緩やかになる。

「ただし早食いをしてしまうと、これらの効果は期待できません。ゆっくりとよく噛んで食べることも大切です」(同)

 逆に野菜は食べず、丼物にめん類という炭水化物の重ね食いをする、さらに運動もしないとなると、当然ながら糖尿病は悪化していく。20代や30代でも、こうした生活を続けて糖尿病になり、若くして重篤な合併症を発症したケースもあったと西村医師は指摘する。

「視力を失う網膜症や心筋梗塞を発症した若い患者さんもいました。糖尿病では特に、食事療法と運動療法が治療の柱となることを知ってもらいたい」

週刊朝日 2016年6月10日号より抜粋