「オバマー!」

「オバマさーん!」

 最後に登場したのが米国のオバマ大統領。スマホを持った手が無数に伸び、勢いよく手旗が振られます。私は伊勢うどんを力強く掲げました。勢い余ってうどんを車道に投げ入れたら、とんでもないことになるな……なんて妄想しながら。

 やわらかいうどんだから大丈夫とか、そういうことじゃないですね。ひとつ間違えたら、平和の大切さを感じてもらうどころか、たいへんな国際問題に発展しかねません。

 伊勢志摩が本格的にサミットモードに入ったのは、ゴールデンウィークが終わった頃から。警察官の数が一気に増加しました。警察庁によれば最大2万3千人態勢だとか。

 サミットの1週間ほど前、主会場となる賢島を訪れました。電車のホームにも車両にも、そして通り過ぎる踏切ごとに、警官が立っています。観光客の姿はほとんどありません。

 観光船乗り場の目の前にある海鮮焼きのお店「なかよし水産」を訪ねると、閉店中でした。店主の中村孝弘さんが、店先でノコギリや金づちを手に改装作業をしています。

「警備が厳しいイメージがあるせいか、4月に入ってからはヒマでヒマで。5月10日からサミットが終わるまでは、もう休んだることにしたわ。ハハハ」

 賢島でのサミット開催が決まった直後、このお店ではいち早く3310円(サミット価格)の特別セットを企画。やがて周辺の店でも次々と「サミット応援メニュー」が登場しました。

「まあでも、これだけ賢島を宣伝してくれてるんやから、6月になったらようけ来てくれるやろ。がんばって取り返しまっせ!」

 首脳たちが集う志摩観光ホテルでお茶でもと思ってホテルに向かったところ、はるか手前で警官に「観光ですか?」と呼び止められました。威圧的な口調ではありませんでしたが。

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