奇しくも同じ長崎出身のお二人…(※イメージ)
奇しくも同じ長崎出身のお二人…(※イメージ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌新連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、福山雅治さんを取り上げる。

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 手放しで喜ぶ。大目に見る。見境がなくなる。アイドルにのぼせた経験が一度でもあれば分かりますよね? 極端な話、何をしても許されるのがアイドル。その一方で、何もしなくても許されるのもまたアイドルの証しです。

 かの安室ちゃんは、自身のコンサートでほとんどMCをしないことで有名です。彼女がそこに降臨し、歌い踊ってくれるだけでありがたい。そういうことなのでしょう。聖子ちゃんの場合、もはや“口上”と呼んだ方がふさわしい、名人の型披露みたいなMCを何十年も続けてらっしゃいますが、それはそれで私らファンにとっては、そのありがたみを毎年確認しに行くという幸せな関係が出来上がっています。聖子神社参拝です。

 このように「特別何かを盛らずとも成り立つ」のがアイドルであり、だからこそちょっとでも特別なことをした途端、そこにとんでもない値打ちが付きます。「手を振ってくれた」「握手してくれた」「自分の町に来てくれた」から始まり、最終的には存在そのものに、気持ちとお金が動く。まさにレット・イット・ゴー。真のアイドルとは、サービス不要、ありのままでいい人。そこで福山雅治。彼こそその極みだと思うのです。

 福山は福山然としていてくれさえすれば、世間は彼が何をしようと咎めたりしません。それどころか、やることなすこと無条件に喜び、思考を介在させずに、今の今まで扱い続けてきました。裏を返せば、世間は福山に対し、特段これといって何も求めてこなかった……ということになります。そんなバカな!

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