19日深夜、外務省を訪れたケネディ駐日米大使(右)と岸田外相。明確な謝罪の言葉はなかった (c)朝日新聞社
19日深夜、外務省を訪れたケネディ駐日米大使(右)と岸田外相。明確な謝罪の言葉はなかった (c)朝日新聞社

“鬼畜米兵”を連想させる凶悪事件だった。沖縄県うるま市の会社員の女性(20)の死体遺棄事件は、元米兵による「強姦し、ナイフで刺し殺した」という最悪の結末を迎えた。オバマ大統領の広島訪問、伊勢志摩サミットを目前に控え、蠢(うごめ)く安倍政権の皮算用を検証した。

 渦中のオバマ氏は5月26、27日に三重県で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて来日し、被爆地・広島を現職の米国大統領としてはじめて訪問する。今回の訪問は「日米の歴史問題の“トゲ”を抜く」とも言われているが、事件をきっかけに「米軍基地問題」という、日米関係のもう一つのトゲが飛び出した。米軍犯罪に詳しい池宮城紀夫(いけみやぎ・としお)弁護士は言う。

「沖縄県警や那覇地検が、独断で米国軍人や軍属を逮捕することはありません。一般的に、事前に警察庁に逮捕の情報を伝えることになります」

 重大事件であれば、警察庁から国家公安委員長、官邸首脳にも情報が上がることが通例だ。シンザト容疑者が緊急逮捕されたのは、19日の午後3時10分。つまり、この前後に官邸に情報が上がっていたとされる。

 だが、日本の“宗主国”である米国への対応が決まっていなかったのか、同日午後7時前に記者団から事件について問われた安倍首相は、返事もせずに無視。参院沖縄選挙区選出の島尻安伊子沖縄北方担当相も、「内容については承知しているが、コメントはしない」と、ひとごとのような態度だった。

 それが、同日深夜になって急変した。午後10時45分ごろに、岸田文雄外相に呼び出された米国のケネディ駐日大使が外務省に到着すると、米国に正式に抗議した。翌20日には安倍首相も「非常に強い憤りを覚える」と表明し、再発防止を求める考えを示した。

 なぜ、態度が豹変したのか。沖縄国際大学の前泊博盛教授はこう分析する。

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