津田大介「ネット炎上のからくりと参加者」 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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津田大介「ネット炎上のからくりと参加者」

連載「ウェブの見方 紙の味方」

ネット炎上で揺れた「まるか食品」の本社工場=2014年12月、群馬県伊勢崎市 (c)朝日新聞社

ネット炎上で揺れた「まるか食品」の本社工場=2014年12月、群馬県伊勢崎市 (c)朝日新聞社

 こうした炎上による人々の情報発信の萎縮を「社会的コスト」と捉え、それを解決すべく炎上を統計的手法で定量分析し、原因と対策を提示したのが田中辰雄と山口真一による新著『ネット炎上の研究』だ。2人の計量経済学者によって書かれた本書が新しいのは、「実際に書き込んで炎上に参加しているのはネットユーザー全体の0.5%に過ぎない」という事実を様々な統計データを用いて明らかにしたことと、炎上が起きる原因を「誰もが相手に強制的に直接対話を強いることができ、それを止めさせる方法がない」と定義したところにある。

 かつては数百万人単位に情報を発信するには、新聞やテレビ、雑誌といったマスメディアを活用するしかなかった。しかし、現在はツイッターが生まれたことで、一個人であってもそれが可能になった──たとえそれが他人を陥れるための執拗な攻撃であったとしても、だ。しかも、気に入らないと思って抗議をする側はほぼノーリスクで、抗議を受ける側はすべてのリスクを引き受けなければならない。こうした非対称性が「0.5%」という一部の過激な攻撃者を産んでいる。

 炎上することが悪いのではない。多様な意見表明が可能な社会において、意見の対立は避けることができない現象だ。問題は、ごくごく一部の人が参加しているに過ぎないネットの「炎上」という現象に社会全体が翻弄されていることにある。本書で語られた問題意識を出発点に、社会全体でこの問題の処方箋を考える時期にきているのだろう。

週刊朝日 2016年5月27日号


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津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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