「廃棄物の処理及び、清掃に関する法律に基づいて、産廃施設の維持管理は適切に処理されています。地下水の総水銀量も定量限界を下回っています」(広報室)

 しかし、水俣湾への水銀漏出リスクはこれだけではなかった。本学園大学の中地重晴教授(環境化学)が指摘する。

「湾内の水銀ヘドロを浚渫して埋め立てたエコパーク水俣も安全とはいえません。大きな地震が来たら液状化し、埋め立ててある水銀が噴き出す恐れがある。湾と埋め立てた水銀ヘドロを隔てている水中の鋼矢板にしても寿命が50年と言われる中、すでに33年が経過して耐久性が不安です。エコパークを管理する熊本県は調査をしっかりとやり、データの公表を含めた対策を取る必要があります」

 エコパーク水俣は残渣プールとほぼ同じ規模を持つ公園。軟らかい水銀ヘドロが地盤では液状化は十分起こり得る。事実、熊本県が昨年4月にまとめた老朽化対策検討委員会の報告には「最大級の地震で地盤が液状化し、水銀を含んだ埋め立て土砂が地表へ噴出することも考えられる」と記されていた。

 県は水銀が噴出しても濃度は低いとしているが、その根拠は敷地内数カ所のボーリング調査で高い数値が出なかったからというもの。しかし、湾内の水銀濃度に濃淡があったことを考えれば、埋め立て地も場所によって水銀濃度が違うと考えるのが自然だ。

週刊朝日 2016年5月27日号より抜粋