樹木:31歳。

林:え~っ、31歳だったんですか!?

樹木:顔はパツンパツンだから、全体像でおばあさんらしくするわけ。あれは大変だった。周りは実際のじいさんで、伴淳(伴淳三郎)さんと31歳の私が、(年寄りの口調で)「よう、きんちゃんよう」「なによ、岩さん」って年寄りの会話やらなきゃなんないんだもの(笑)。

林:手がきれいすぎるから、手袋をはめてたんですよね。

樹木:先っぽを切ってね。そんな努力はしたの。私は美人女優の系列に一度も入ったことがなくて、ブスの代名詞みたいな感じ。だから人に見られるという感覚も一切なかった。長く役者をやるには、それが幸せだわね。55年も役者をやっちゃったけど、今となってみれば、おかげさまで上出来の人生だったなと思う。

週刊朝日  2016年5月27日号より抜粋