日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長 (c)朝日新聞社
日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と三菱自動車の益子修会長 (c)朝日新聞社

 日産のカルロス・ゴーン社長はついに、三菱自動車と電撃再編をまとめた。

 三菱自を日産が傘下に入れるメリットは何か。日産社員は、こう解説する。

「うちにとっては、結構おいしい話。そうでもなければ、2千億円超も出資しませんよ。数日で決められる話ではないです。清原(和博被告)の覚醒剤事件ではないですが、半年か1年なりの調査の末、筋書きと戦略を持って、あとはタイミングだったという話。遅かれ早かれの話が来た、ということではないでしょうか」

 両社の提携話が加速したのは5月。ゴーン氏と益子氏のトップ会談を機に、かくも急速に大型再編が進んだのはなぜか。

 両社が会見を開く前の12日午前、首相官邸を訪れる日産幹部の姿があった。提携の発表前だったが、菅義偉官房長官へ説明するためだった。正式発表後の会見で、菅氏は産業の競争力強化や地域経済への貢献の面での期待を表明した。

 菅氏の選挙区は偶然にも、日産本社のある横浜市西区などの神奈川2区。菅氏の自宅は、日産本社の目と鼻の先にある。

 さらに、もう一つの偶然がある。三菱自の主要拠点の水島製作所や関連企業が集まる岡山県は、安倍政権を支える加藤勝信・1億総活躍担当相のおひざ元だ。

 水島は下請けなどの関連企業も含めると、約1万4千人もの雇用の場。三菱自が万一にも破綻すれば、「地方創生」を掲げる政権への打撃が心配された。

 業界内では、今回の資本提携を「水島製作所の救済」として、官邸の影を感じ取る見方もある。

 ただ、それだけではない。自動車業界に詳しい浜銀総合研究所の深尾三四郎主任研究員は「短期的、国内的には」そうした見方も成り立つとする一方で、ゴーン氏のしたたかな世界戦略に目を向ける。海外で進む環境規制への対応だ。

次のページ