文壇での活躍が注目される押切もえ (c)朝日新聞社
文壇での活躍が注目される押切もえ (c)朝日新聞社

「ノミネートおめでとう!すげーよ、もえちゃん」

 短編連作小説『永遠とは違う一日』(新潮社)が第29回山本周五郎賞の候補になったモデルの押切もえ(36)に、作家の阿川佐和子さんが激励メールを送った。

 阿川さんは“もえちゃん”とテレビ番組「スタ☆メン」(2005~07年)で共演して以来の仲なのだとか。

「私がMCをする番組に、もえちゃんはパネラーとして出演して。その縁で食事するようになったんですけど、姉のように慕ってくれた」

 付き合う中で、妹分が文才を見せ始める。モデルとしての苦悩を書いたエッセー『モデル失格』(09年)、続けて出した小説『浅き夢見し』(13年)を読んだ阿川さんは驚いたという。

「ディテールを丁寧に描く力があるのね。テレビ番組のパネラーのときも新聞を読んでよく勉強していたし、努力家でもある」

 押切は数年前、執筆について悩み、阿川さんに相談した。阿川さんは「とにかく書き続ける、それが何より大事」と伝えたという。

「締め切りに追われて苦しむ仲間を増やしたい一心で言っただけ(笑)」

 押切はその言葉を胸に、1年に及ぶ文芸誌への連載に取り組み、それをまとめた本が今回の候補作に。本書にはスタイリスト、アイドル、助産師など、さまざまな女性が登場し、夢や悩みがいきいきと描かれる。

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