「報道の自由」は過去最低を更新し、パナマ文書は調査しない――。そんな日本に作家の室井佑月氏は唖然とする。

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 国連人権理事会から特別報告者に選ばれたカリフォルニア大アーバイン校教授のデビッド・ケイさんは、一度は去年の12月に予定された調査を、日本政府になんたらかんたら理由をつけられ先送りされた。しかし、世界で「国連の調査を妨害している」と日本批判が起こったため、今回は予定通りに調査できたみたいだ。

 日本政府は、デビッドさんの視察を、「今年の秋以降で」といっていた。

 秋といったら、選挙が終わってから。それまで不都合な事実を隠したい、それこそ報道の自由を軽くみている証拠だわ。

「国境なき記者団」の「報道の自由度」ランキングが発表された。

「報道の自由度」、2010年に日本は過去最高の11位だったこともあるけど、安倍政権になって順位は下がってゆき、去年は過去最低の61位。今年はさらにその下の72位になっちゃった。

 そのうち、ロシアや中国や北朝鮮なみにするつもりか? それらの国は、ほかの国から白い目で見られているんですけど。

 菅官房長官も高市総務相も、デビッドさんの面談から逃げ回っていたというから、今現在、自分らはヤバイことしてるって自覚はあったに違いない。わかってやっているんだから、ほんとうのワルだよ。

 地震は、震度7という巨大地震で、本震が起きてからも、ぐらぐらと揺れつづけている。熊本と大分の避難者は4万人を上回るらしい。

 しかし、熊本県知事が求める「激甚災害指定」を安倍首相はすぐに出さなかった。

 
「激甚災害指定」は被災自治体に対し、国が迅速にふんだんな財政支援を行えるものだ。

 結局、お金を出すのを渋っているのか。できることはぎりぎり地方でやれ、そういいたいのか。冷たいよな。

 海外にいっては、金をばらまいてきているのに。海外で自分らだけがいい顔をできればそれでOKか。でも、そのお金は血税だ。こういうときにこそ、使うべきお金。

 それと、あたしたち国民に向かって、「税収が足りない」とか二度といわないでほしい。そのまえにやることあるでしょう?

 世界を揺るがしたパナマ文書。4月20日付「日刊ゲンダイ」の「金子勝の天下の逆襲」にはこんなことが書かれていた。

「国際決済銀行(BIS)の公表資料によると、タックスヘイブンであるケイマン諸島に対する日本の金融機関の投資や融資残高は、2015年12月末時点で5220億ドル(約63兆円)もあるという」

 パナマ文書を調査しない国は、ロシアと中国と日本くらい。

 税収が足りなくば、法の抜け道を閉ざし、適正に課税して金持ちからお金をとったらいい。

週刊朝日 2016年5月20日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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