同協会が設立した2011年から、アンガーマネジメントの講座を1日研修として導入する企業が増え、設立当時8千人程度だった受講者数が、15年には10万人を突破。現在では、三井物産、野村證券など大手企業も従業員を対象に毎年アンガーマネジメント研修を勧めている。

 もちろん、職場の人間関係だけに限らず、家族や友人との良好な関係を築くために活用してもいい。

 いつも「臭い」「汚い」と妻から口うるさく罵られていたとしても、「注意をしてくれてありがとう、恥をかかずに済んだよ」と、答えてみると、案外仲睦まじくなれる。

 三井物産に勤める西川行夫さん(38)は、昨年の夏、日本アンガーマネジメント協会の研修を受けたひとり。

 それまでは、小2の長男(7)の成績や片付けをしないことなど、いちいち腹を立てていたが、研修を受けてから「まあいいか」と思うようになったという。

「子どもに対して期待をかけるあまりに、成績が少しでもよくないと腹を立てていました。研修を受けてからは怒りに対して『なぜ怒るのか』と客観的に理由を分析できるようになりました。子どもにも、『こうあるべき』というこだわりが多すぎました。こだわりをなくしてからは、小さなことで怒らなくなりました」(西川さん)

 一度しかない人生、どうせ生きるのなら楽しいほうがいい。言葉ひとつで自分も周りも変わるのなら、今すぐに試してみよう。(村田くみ)

週刊朝日 2016年5月20日号より抜粋