「地元にカネをばらまき、住民の反対を押し切ってもんじゅは造られた。ナトリウム漏れの大事故を見てもわかるよう、超危険、浪費、反平和がもんじゅの本質なのです。このまま続ければまた事故が起きます」

 こうした地元の心配をよそに、文科省ではもんじゅ存続を前提とした議論が進む。だが、機構に代わる運営主体が見つからない以上、落としどころはどこか。

 10年から4年間、内閣府原子力委員会の委員長代理を務めた鈴木達治郎氏はこう予測する。

「発電プラントとするなら、機構を分割して国が別法人を作ることもあり得る。いまでももんじゅの発電部門は研究開発と別組織になっているから、そこだけ切り離すのです。あるいは経産省が火中の栗を拾う形で引き取るシナリオもゼロではない。それらができなければ、発電をやめて研究炉にしてしまうかもしれません」

 規制委の勧告には、「発電プラントとして機構には運転する資格がない」とある。それなら、文科省としては研究開発専門に変えると言いだすことも考えられるという意味だ。そのうえで鈴木氏は、いまの議論はもんじゅを動かすことありきで、根本的なことが抜け落ちていると指摘する。

「いままでの紆余曲折で研究用なのか事業用なのかわからなくなり、それが混乱につながっています。何のためにもんじゅを動かすのかをもう一度考えたほうがいい。廃炉が最適ということもあるのです」

 国はすでにもんじゅに1兆3千億円を費やしているが、実用化のメドは立っていない。今後、馳文科相は検討会が5月中にまとめる報告書を参考にしてこの夏にも決断する。気になるのは参院選とのタイミングだが、存続した場合に自民へ悪影響を与えないよう選挙後になるとの見通しがもっぱらだ。(ジャーナリスト 桐島 瞬)

週刊朝日  2016年5月20日号