わが国全体でみると、電柱が立っていない部分を除いた道路延長(左右合算)はざっと40万キロ。だが進捗状況は約9千キロ(同)と全体の2%程度。最も進んだ東京都でも5%程度とお寒い状況だ。

 ではあらためて無電柱化で期待できる効果とは何かを知っておきたい。国土交通省道路局によると三つある。担当者は言う。

阪神・淡路大震災や東日本大震災時には、道路に倒壊した電柱や電線が邪魔になり、被災地への物資輸送などに支障が出た。地中化すれば倒壊することもなく、管路が揺れと同じ方向に動くため、巨大な地割れでもない限り壊れにくくなる。また、歩道内の電柱の解消や、良好な景観、観光振興にもつながります」

 いいことずくめだ。限られた道路幅員を再度レイアウトし、「自転車専用道」を新設して歩行者との事故を減らすこともできる。なぜとっととやらないのか。京都市の担当者が言うように、やはり問題は費用だ。

 無電柱化には、道路管理者の自治体と国、電力会社(通信会社)の合意が必要だ。1986年から全国で計画的に進めてきているが、その費用は同省試算で1キロあたり平均約5.3億円かかる。国が行政負担分(同3.5億円相当)の約半分を補助するが、「コストは電柱と電線のおよそ10倍といわれている」(国交省担当者)。京都市の場合はさらにかかるという。

 全国の道路をすべてやるのはさすがに非現実的なのかもしれないが、例えば京都市全体では、国試算からだと3兆~4兆円で実現する計算だ。とくに道路環境が悪い都市の道路や地震リスクの高い密集地、訪日客で賑わう地域では十分に検討の価値あり、である。(本誌取材班 鳴澤大、西岡千史、永野原梨香)

週刊朝日  2016年5月6-13日号