あたしが今、いちばん気になっている話題は、「パナマ文書」。大企業や一部の金持ちがタックス・ヘイブンを利用し、法律スレスレの「節税」を行っていたと聞けば、良い気持ちはしない。

 アイスランドの首相はこのことで辞任に追い込まれ、イギリスのキャメロン首相も、父親が設立した投資ファンドを所有していたため、窮地に立たされている。

 4月6日付の朝日新聞デジタルによると、

「オバマ米大統領は5日の記者会見で『税逃れは世界的に大きな問題だということを改めて思い起こさせた。多くの取引が合法で、それがまさに問題だ』と述べ、抜け道を防ぐ取り組みが必要との考えを示した」

 という。あたしもその通りだと思う。まず、抜け道のある法律がおかしいわけで、そこを変えなきゃならない。

 菅官房長官は日本では調査しないといっているが、それはなぜなんだろう?

 増えつづける社会福祉費で、国費が足りないんでしょ。いつもそういってるでしょ。だから、消費税増税だって決行したわけだし。

 ならば、今後のことを考え、きちんと調査をし、法の抜け道を塞ぐために動くべきではないか。

 それをするつもりがないといわれれば、わざと抜け道を作っておきたい理由があるように見えてしまう。

 話は変わって、TPPについてもおなじことがいえる。政府が提出したTPP交渉資料は、ほぼすべてが黒塗りだ。

 TPP特別委員会で野党が質問しようにも、どうにもならない。

 
 海外とTPPの交渉をはじめてから約3年。たしか、交渉がはじまったばかりの頃は、

「他国も絡んでいることだから、交渉の途中経過は話せない」

 というような説明をされていた。が、すでに、終わった交渉もある。どのような交渉がなされてその結果となったのか、私たち国民がこれから深く関わる事柄なのに、それを教えられないってどういうこと?

 そういうことをされると、政府は国民のための交渉なんてしなかったんじゃないか、だから隠さなきゃならないんじゃないか、そんなふうに思えてしまう。

 安保法制のときも思ったが、ひょっとして、

(説明したって、おまえらわからないだろ? なら、黙ってついてくればいい)

 とでもいわれているのだろうか。だとしても、それは難しい。

 なにしろ、この国の首相の安倍さんは、

「私はTPP断固反対といったことは一回も、ただの一回もございません」

 そう堂々といい切ってしまえるお人なのだ。2012年の総選挙のポスターが、証拠として残っていても。

 マスコミは彼に甘すぎやしないか? そういった甘やかしが、いったい誰のためになる? 彼はいっそう乱暴になるし、国民の知る権利が妨害されるだけ。

週刊朝日  2016年5月6-13日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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