津田大介 熊本地震報道で見えた「紙メディアの力」を解説 (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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津田大介 熊本地震報道で見えた「紙メディアの力」を解説

連載「ウェブの見方 紙の味方」

避難所で炊き出しに並ぶ避難者たち(熊本県西原村) (c)朝日新聞社

避難所で炊き出しに並ぶ避難者たち(熊本県西原村) (c)朝日新聞社

 もはや「紙」にこだわっているのは高齢者を中心とした一部の層にしか存在しない。現在の国内スマホ契約数は約7千万件。多くの人にとって情報を入手するための起点がスマホである以上、紙媒体が今まで以上にデジタル対応を進めなければならないのは自明のことである。

 その意味で熊本地震をめぐる朝日新聞社会部の「ウェブ報道」は興味深いものだった。足を使って記者6人がかりで熊本県内の避難所を調べ、施設名を羅列する記事をいち早くデジタル版で公開。ツイッターで「どなたか地図に落としませんか?」と呼びかけた。

 これにネットを通じてつながった九州内外の学生有志グループが反応。グーグルマップに避難所を落とし込む作業を買って出て、わずか1日後にはグーグルマップ上で避難所の情報を一覧できるようになった。

「紙」の調査力で検証したデータを「ウェブ」の速度感で提供し、ボランティアに落とし込み作業を任せることで、報道リソースを減らさず効率的に情報を多くの人に届けられる――「紙」と「ネット」の融合をわかりやすい形で示した事例と言えよう。

 紙メディアがどうデジタルに対応すればいいのか現場では試行錯誤が続いているが、ここにきてようやく意味のある取り組みが見られるようになってきた。どっこいまだまだ「紙」がやれることはありそうだ。

週刊朝日  2016年5月6-13日号


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津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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