事前に「業務提携に関する覚書」を交わし、「本契約に至らない場合には、速やかに全額返還する」との記載があったので安心した。Aさんは子どもの学資保険を解約して、100万円を振り込んだ。その後、何度かX氏の自宅アパートでメイク講座の指南を受けた。

「講師はX氏の交際相手Oさん(現・ママレン専務理事)で、メイク用品は私物でした。ところが講座が終わらないうちに、今度はフェイシャルマッサージを勧められるんです」

 疑問に思ったAさんが「まずは納品を」と催促すると、X氏は「信じない人は成功しない」と強弁。

「結局、客も化粧品も存在しないことがわかりました」(Aさん)

 今回、X氏が社長を務めていたという化粧品メーカーのオーナーに確認した。

「3年前、ウチの経営がきつい状況の時に知り合った。Xはペラペラと口がうまく、株主や社員に私の悪口を言って会社を乗っ取ろうとしたのでクビにした」

 Aさんは現在、ママレンを退会、返金を求めているが、X氏は応じていない。

「なけなしのお金を取られて悔しい。イベントの『ママレンフェスタ』の1回目を、私は地元で担当し、準備にも奔走しました。立て替えた経費も支払われず、フェスタの収入10万円も持っていかれました」

 現在、Aさんは警察に捜査を依頼している。

 悪徳商法事件に詳しい大谷恭子弁護士が指弾する。

「Aさんが払った100万円の対価は商品。購入したのに納入できなくなった事情が起きたのなら、商取引の失敗。しかし、この場合、最初から商品を納入できる見込みがないから、その言い分は通用しない。詐欺罪が成立する可能性が高い。できるだけ文字に残さず話術で信用させ、他にも欲しいという人がいると言って焦らせてお金を騙し取るトーク商法という手口です」

週刊朝日 2016年5月6-13日号より抜粋