「ところがX氏はアナザーキッチンの事務所に机を置いて居座るものの、全く仕事をしない。私は無報酬で仕事をさせられるなど契約不履行が続いたので、事務所から追い出しました」

 しかしX氏は、関係が切れる前に、ママレンの事業説明会を浅倉さんの料理教室で開催。説明会には浅倉さんの受講生も多く参加していた。

「その後、参加者から『お金を返してもらえない』との声が相次いだ。本当にショックでした。ママレンで頑張るママたちは悪くない。裏で彼女らを利用するX氏を追及してほしい」

 と浅倉さんは憤る。

 事業説明会でX氏は「自分の会社とソニー生命が約定を交わした」と強調した。大手生命保険会社の名は、参加者を信頼させるのに十分効果的だったろう。

 さらに被害事例を見ていこう。まずは、千葉県在住のAさん(30代)のケースだ。自宅で始めたネイルサロンの経営が軌道に乗らず悩んでいた。昨年4月、知人に誘われ、ママレンの準備説明会に参加した。この時の会場は、ソニー生命の支社の会議室。X氏は、こう語ったという。

「自分は一流企業の経営者たちに経営指導してきた実績がある。ママさん起業家は勉強が必要だ。ただで教えてあげるから定期的に勉強会をやっていこう」

 5月初旬、X氏から電話がかかる。

「Aさんをママレンの美容部門に抜擢したい。メイク講座を開いて化粧品を売ってほしい。実際の仕入れ値は300万円だが、Aさんなら100万円にしてあげる。すでに30人のお客さんが待っているので、半年もすれば元が取れる」

 さらに続けてこう言った。

「自分は以前、その化粧品のメーカーの社長をしていたので、すぐに納品できる。100万円用意して」

 Aさんは事業を波に乗せる最後のチャンスと考えた。

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