妻:父は05年に病気で亡くなったんですが、ずっと自分の世界で自由に生きているような人でした。いろんな事業に挑戦しては失敗して、波瀾万丈の人生を歩んでいた。そんな父に「お前、一生サラリーマンでいる人生なんてホントつまんないぞ」と言われたことがあったんです。自分では「普通に会社員としてやっていくんだろうな」と思っていたけれど、その言葉が私の心にずっと残っていた。その点、彼は出会ったときから自分で人生を切り開いている人だった。生き方を「そういうのもいいね」と捉えられたのは、父の影響もあるかもしれません。

夫:僕らはお互い束縛されるのが一番苦手なんです。付き合い始めてもスペインとパリにそれぞれ住んで、会うのは1カ月に一度、という生活だった。

妻:私も自由に自分のペースで生きたいから。

夫:それに僕、お金が全然なかったんですよ。そういう人間とよく付き合うなあ、と思っていた。

妻:本当に貧乏だったよね。

夫:バルセロナでの食事は毎日、ゆでたパスタだけ。どんどん痩せていって(笑)。

妻:でも私には定職があるし、彼が貧乏なことは気にならなかった。

夫:「俺と結婚してもいい、なんていう人はもう現れない。相当レアな人だ!」って思って結婚したんです。

週刊朝日 2016年5月6-13日号より抜粋