川内有緒さん(右)、イオさん夫妻(撮影/写真部・岸本絢)
川内有緒さん(右)、イオさん夫妻(撮影/写真部・岸本絢)

 現在、エディター&ライターとして活躍する夫、川内イオさんとノンフィクション作家の妻、川内有緒(ありお)さんの夫婦。2005年、パリの国連で働いていた有緒さんは「これから世界一周の旅に出る」という若者と出会った。7歳年下のイオさんを「がんばって」と送り出した半年後、二人はパリで再会。そして物語が始まった――。

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妻:国連職員って一見やりたいことをやれているようで、実際は自分の裁量でできることがとても少ない。すごく窮屈ななかで生きているんです。でも福利厚生はものすごく手厚くて、25年間勤めればかなりの額の年金をもらえる。

夫:職員全員にたばこカードが支給されて、たばこが免税されるとか。

妻:なんのために職員がたばこを安く買う必要が?って思いますよね。ダメですよね、そんなこと。

夫:僕らの税金でもあるんですからね。

――有給休暇は年間30日。2年に一度は国連持ちで祖国に帰省もできる。そんな国連での驚きの体験と奮闘ぶりは、妻の著書『パリの国連で夢を食う。』に詳しい。

妻:もちろん仕事もしているけれど、内部の人たちはみんな「一刻も早くリタイアして自分の本当の人生を歩みたい」というような話ばかりしている。「そういうのはいやだな」と思っていたところに彼が現れて、「ちゃんと自分の人生を生きようとしている人だ」と惹かれたのかもしれません。とはいえ彼はまだ旅の途中で、「ワールドカップ観戦があるので」と、ドイツに行っちゃった。

夫:でもワールドカップが終わったあと、バルセロナで仕事をしていた先輩ライターに「俺、日本に帰るからバルセロナで仕事あるよ」って言われたんです。即決で「行きます」(笑)。それで世界一周はやめることにした。その前にとりあえず彼女に会いたかったから、パリに戻ったんです。

妻:また突然現れて「一緒に旅行に行きましょう!」って。付き合いだしたのはそこからですね。

――そんな夫の「自由さ」は、妻の父の姿に通じるところもあったようだ。

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