「穏やかな性格で人望はあったが、弁が立つわけでも、戦闘能力に長けたわけでもなく、テロ組織のリーダーとしては珍しいタイプ。しかし、豊富な資金力を背景に、アルカイダ組織を各地に構築していったのです」

 都市伝説のように、いまもビンラディンの生存説が絶えない。米国家安全保障局(NSA)が国民の情報を収集していたと内部告発した元CIA職員のスノーデン氏が、「ビンラディンはCIAの監視下、妻や子供たちとバハマで優雅に生活している」とロシアメディアに暴露。昨年5月には、イラク戦争の内幕報道などのスクープで知られる、ジャーナリストのセイモア・ハーシュ氏が英国の雑誌で、殺害作戦で銃撃戦は起きなかったと主張した。

 もっとも、黒井氏はこう否定する。

「いまも米議会でビンラディンをめぐる様々な議論は絶えませんが、生存説は100%ありません」

 ビンラディンの遺言には、「スーダンにある2900万ドル(約32億円)の資産はジハード(聖戦)に使うことを望む」と記されていた。遺産の行方はどうなっているのか。(本誌・永井貴子)

週刊朝日 2016年5月6-13日号