漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「ラヴソング」(フジテレビ系 月曜21:00~)について、主人公を演じる福山雅治の扱いに嘆く。
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福山雅治のアゴが丸くなっていた。田中哲司のアゴも丸くなっていた。「現象には必ず理由がある」。以前、福山が演じた「ガリレオ」・湯川准教授の決めゼリフだ。
つまり、「女優と結婚すると、アゴが丸くなる」。自然の原理なのかもしれない。
結婚後初ドラマは、若くてエロい女が、「ねぇ、来て~」と、福山をベッドに誘うシーンから始まった。丸くなっても、モテるんですキャンペーンか。でもね、アゴだけじゃなくて、お腹も背中も丸いんだ。もう「普通のおじさん」として扱ってあげようよ。と、思って見てるのに、それを許さない制作側。「俺、足長いじゃん。狭い所で寝れないわけよ」などと、ちょいちょい「俺かっこいい」セリフを繰り出してくる。自分で「足長いじゃん」と言う実年齢47歳。そんなこと言わされる方が不憫だわ。
夢を失った元ミュージシャンが、孤独な少女と出会い、音楽を通じて心を通わせていく……というストーリーも、既視感たっぷりだ。昔あったよ、こういうドラマ。同じフジテレビでやっていた「傷だらけのラブソング」(2001年)。高橋克典演じる、挫折した元音楽プロデューサーが、不良少女の歌声に心打たれ、彼女をデビューさせる話だった。中島美嘉の歌手、女優デビュー作で、現実とシンクロさせた大プロモーション作品。
ありがちなストーリーラインに不安を抱いたのか、フジテレビはキャラ設定を盛り込みまくった。施設育ちで、吃音症で、愛煙家で、バイク乗りで、自動車整備士で、歌がうまい少女。そして福山は、元ミュージシャンで、臨床心理士で、企業カウンセラーで、ひも。そんな奴いるかーい!
ただひとつ言えることは、いつの時代も、挫折したおじさんを再生させるのは、少女の歌声なのだ。福山に想いを寄せる言語聴覚士役・水野美紀が、自虐的に「宍戸夏希40歳、行き遅れた独身女です」と歌っても見向きもされない。「現象には必ず理由がある」。若くなければ、だめなのか。
※週刊朝日 2016年4月29日号