「学校の先生が質問や進路相談に応じ、成績不振者にはOB・OGの医大生がサポートします。寮生活をすると、規則正しく規律ある生活を送れるだけではなく、コミュニケーション能力、協調性なども身につきます」(同)

 医学部志望者には、長崎大学主催の「ブラック・ジャックセミナー」への参加を勧めているという。

「レーザーメスで鶏肉を切る模擬手術や、研究室の見学で、やる気が出るようです。さまざまな職業の卒業生を招く『OB講話』を年に2~3回実施していますが、医師には医療現場の厳しさも話してもらうようにしています」(同)

 医療現場の厳しい現状や医師としての心構えも伝える仙台第二や青雲のような学校の取り組みは、医業への高い志を抱く生徒にとって、目標達成への強力な後押しとなることだろう。

 18年入試から、東大理IIIは面接を導入する。その理由について、東大の南風原朝和副学長は語っている。

「最難関だからと受験し、あとで医学に向いていないことに気づく学生が少数ながらいます。4年次に実施する臨床実習ではコミュニケーション能力が必要なため、将来、医療や医学研究に従事するのにふさわしい資質をもった学生を、学力試験だけでなく、多面的・総合的に選抜するためです」

 仙台第二の木村剛教諭によると、1年のときには70人ほどが医進会に入っているが、3年になると50人ぐらいに減るという。

「現場を見学したり、医師の話を聞いたりするうちに、『自分は医師に向いていないと思う』という生徒もいます。それでいいと思います。『医進会』の活動を通じて、医師になりたいという思いを強くする生徒もいます。やりがいも大変さも知ったうえで目指す生徒には、大きなモチベーションになると考えています」

 医学部に強い高校では、医学生や医師の卒業生も多い。彼らが母校を訪れ、後輩に話をする機会も多く、さらに医学生が生まれる連鎖もあるようだ。

 医学部は医師という職業に直結した学部。だからこそ、高校生のうちから自分の適性を考え、先輩の話を聞き、現実を理解したうえで、志望することが大切だといえるだろう。

週刊朝日  2016年4月29日号より抜粋