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たとえば、毎日昼食には、セブン―イレブンの弁当を食べていた。そして、私が「毎日セブン―イレブンの弁当を食べていて飽きませんか」と問うと、「私が飽きるということは、お客さまも飽きるということで、ただちに飽きない弁当をつくらねばならない」と、当然のことのように言った。優れた経営者だと、私は尊敬していた。
その鈴木氏に、いったい何が起きたのか。なぜ取締役会で賛同が得られない事態になってしまったのか。
2人の社外取締役が井阪社長の交代に反対したのは、一つはセブン―イレブンの業績が好調であること、そしてもう一つは、鈴木氏が考えていた後任候補の古屋一樹副社長が、井阪氏よりも8歳も年上であったことだった。実は、取締役会で議長役を務めた村田紀敏セブン&アイ社長は、2月に井阪氏が鈴木氏の求める退任を断った後に伊藤名誉会長を訪ねて、鈴木氏の人事案の「後押しをお願いします」と頼んでいる。伊藤氏は、それを拒否したのだ。
事情に詳しいエコノミストによると、伊藤氏が鈴木氏に不信感を持ち始めたのは、鈴木氏が息子による世襲と思しき行動に出たからだという。
2014年の3月にセブン&アイ・ネットメディアがセブンネットショッピングを吸収合併した。そしてネットメディアの社長に息子の康弘氏を据えた。セブンネットショッピングは、99年にソフトバンク、セブン―イレブン・ジャパン、ヤフーなどの合弁会社としてつくられ、そのときに社長についたのが富士通やソフトバンクで働いていた康弘氏であった。しかし業績は極めて悪かった。それを鈴木氏がネットメディアを使って吸収合併してやったことになる。そして15年の5月にはセブン&アイの取締役にしている。「流通の神様」も、人の親だったということなのか。
※週刊朝日 2016年4月29日号

田原総一朗
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数
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