そして、頻発する謎の殺人事件。死体発見者は、酔っぱらいのサラリーマン。駆けつける神奈川県警のパトカー。英国庭園に咲き乱れる薔薇の花とか、なにそれ状態。むしろ演出が本広克行なので、「踊る大捜査線」方面にまっしぐらだ。音楽だって、捜査場面はドドンドンにダダンダン。悲しい場面は、マーラーの「交響曲第5番」という本広テイスト。警察署長は小野武彦で、思いっきり「スリーアミーゴスの一族」です。

 ところどころ「常に人間であるふりを忘れるな。脈のあるふり、鏡に映るふり……」と、原作トリビュートなセリフもあるけれど、それより気になる吸血鬼たちの注意力不足。三杉は鏡に映り忘れるし、真理亜お嬢さま(中条あやみ)は脈打ち忘れるしで、ちょくちょく大ピンチ。で、大変!吸血鬼だってバレちゃう……となったら、首すじガブリ。野犬か。

 お嬢様は日光に弱いという設定で、常に黒い日傘をさしていたのに、ラスト真っ昼間に街を去っていく時は、まさかの日傘忘れ。うっかり吸血鬼すぎて心配になるわ。もしかしたら「バケモノ」じゃなくて「うっかりものが事件を暴く」だったんじゃないの。

 この「踊るポーの大捜査線」。もしも続編があるのならば、お台場あたりを舞台にして、永遠の時を生きる青島刑事(織田裕二)とか、ぜひ見たいんですけど。他局だけど。

週刊朝日  2016年4月15日号