いずれも脳内のセロトニンやノルアドレナリンの働きを強くして抑うつ症状を改善する。しかし三環系は、他の神経伝達物質にも影響を及ぼすため、副作用が出やすい。その一方、SSRIとSNRIは、セロトニンやノルアドレナリンだけに作用するため、副作用が少ない。そのため、軽度から重度まで広く使用され、第一選択薬となっている。重度の患者でこれらの薬が効かない場合に第二選択として三環系が試される。

 若年層への使用は慎重さが求められる。SSRIとSNRIは非鎮静系で、不眠や焦燥感を起こさせる。

「とくに若年層は、使用すると暴力や自殺行為などの衝動が出る可能性があります」(山田医師)

 こうした恐れがある場合は、眠気などの鎮静作用があるNaSSAを使用する。

 重度の患者で抗うつ薬が効かない場合は、抗うつ薬に別の薬を加える増強療法という方法がある。リチウム(気分安定薬)や非定型抗精神病薬を併用する。

「非定型抗精神病薬は、もともと統合失調症に使用される薬ですが、少量だけ併用すると抗うつ薬の効果が上がります」(同)

 一口にうつ病といっても、重症度、タイプ、伴っている病気は患者によって千差万別。うつ病の「個性」に合わせた治療が不可欠だ。

週刊朝日  2016年4月15日号より抜粋