歩く動機づけの一つが、他人との交流だ。

 そこで、いつでも誰でも立ち寄って人と話す場をつくる自治体の取り組みが増えている。

 愛知県東海市の大池自治会。住宅地が広がり近隣にスーパーなど商店がなく、自動車がないと買い物にも行きづらい。高齢の住民が増え、閉じこもりがちな生活が課題になっていた。

 そこで08年、大池自治会長だった鷲見誠一さん(75)らが市と連携して、一日中開放して誰でも立ち寄ってお茶を飲んだりおしゃべりをしたりできる「健康交流の家」を計画。13年にオープンした。それまでは集会所としてイベントや会議のときに利用するだけだったが、「健康交流の家」では住民ボランティアがお茶などを出すサロンを常設し、朝9時から夕方5時まで誰でも自由に出入りできるようにした。

「健康交流の家」の利用者に開設前後の行動の変化についてアンケートしたところ、利用者の約8割が65歳以上で、44%がよく歩くようになり、47%がよく外出するようになったと回答した。調査を実施した名古屋市立大学の細川陸也助教(地域保健看護学)は、

「歩く機会が増えた人のうち約7割が健康になったと感じていると言います」

 と言う。

 今では月にのべ2千人以上が訪れる。ホールでは体操や歌の練習などを楽しむ人もいれば、サロンでテレビを見たり会話を楽しんだりする人もいる。

「地域の交流の場になっていますね。ボランティアも利用者も高齢者が多いのですが、来るうちに人が変わってきました。テレビばかり見ていた人がはつらつとよく話すようになりました。当初、男性はなかなか来なかったんですが、昔の映画の鑑賞会などをやっているうちに、男性も増えてきました」

(本誌・長倉克枝、山内リカ)

週刊朝日  2016年4月15日号より抜粋