仮にトランプ氏が大統領になり本当に在日米軍撤退を実行すれば、「ひょうたんから駒」で、暗礁に乗り上げている沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設は問題そのものが消滅する──なんてことにならないものか。だが、基地問題の解決のため米国でロビー活動を展開するシンクタンク「新外交イニシアティブ」の猿田佐世事務局長はこう語る。

「米国の対日外交の主導権はワシントンのごく少数の『知日派』が握っている。彼らの基本方針は日米同盟の重視と在日米軍の維持。その状況下でトランプ氏が大統領になっても、トランプ氏にとってこの問題の優先順位が高くないため、現在の知日派が日米外交に影響を及ぼし続ける可能性が高い。また、軍の意向が強く反映される議会を通すのも困難です。強権を発動して大きな政策変更をするとは考えづらい」

 結局、辺野古の問題は日本側から対案を示して地道に米国と交渉していくしかないようだ。“他力本願”、しかもよりによってトランプ氏に期待するなど、もっての外なのである。

(本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2016年4月15日号