井関さんは今回の取材を機に、2007~15年の8年間に同ドックを受診した人の内訳を調査。その結果、受診者935人のうち30~40代の受診者は計29人。このうち12人は「認知機能は正常、ほぼ正常」、17人が「問題あり」だった。

「問題あり」のうち、若年性認知症やMCIと診断されたのは4人で、あとの13人はうつ病や統合失調症、成人のADHD(注意欠陥・多動性障害)など、別の原因によるものだった。

「記憶力が低下する病気は認知症に限らず、改善できる病気もあります。漠然と不安がるのではなく、『認知症である』なら早めの予防治療を心がける、『認知症でない』なら医学的に確かめて、その背景に別の病気があれば、その治療に専念する。これが大事です」(井関さん)

 では、具体的にどういうケースだったら、物忘れ外来などを受診したらいいのか。取材でわかったチェックポイントをまとめた(下)。

 特に親やきょうだいに若年性認知症の人がいるなどの家族歴は、若年性認知症のリスクファクターになる。井関さんによると、そういう人は早めに外来を受診し、定期的に検査を受けたほうがよいそうだ。

<30~40代の物忘れ チェックポイント>
□ど忘れやモノの置き忘れ、固有名詞が出てこないのは問題なし
□仕事上で物忘れが続いたら、まずストレスの影響を疑う
□通勤の駅を乗り過ごすなどルーチンワークができないときはうつ症状の可能性大
□物忘れが頻繁に起きるなら、睡眠時間が少なくないかをチェック
□「年だから」と脳を使うことをサボると、記憶能力はどんどん落ちる
□本人に物忘れの自覚があればセーフ。周りから指摘があった場合は受診を
□家族に若年性認知症(※)の人がいるなら、物忘れドックなどの受診を
□会議や家族で話していた内容を、翌日には思い出せない場合は受診を
□物忘れやミスを上司や同僚、家族から指摘されるなら受診を
□同時に複数の作業ができず、仕事や家事の段取りが悪くなったら受診を
※64歳以下で発症した認知症

週刊朝日 2016年4月8日号より抜粋