AKB48を長い間好きな人は、彼女たちをアイドルとしてではなく「人間」として見るようになる。だからスキャンダルが起きてもすぐに見放すのではなく、その対処や回復力を見る。入ったばかりのメンバーには、アイドルとして何をしたらいいのかをファンが教えて見守る。SKE48などの姉妹グループができたことで、地域愛も生まれる。そして新潟にNGT48が誕生したことで、今後、アイドルが野球やサッカーのように本格的に地域に根ざすようになっていくか試されている。

 アイドルだからこそできることもある。たとえば震災復興支援活動だ。

 東日本大震災が起きた2011年3月11日、選抜メンバーは新曲のミュージックビデオ撮影のために海外にいて、震災を体験していない。それが彼女たちを復興支援に駆り立てる原動力の一つにもなっている。

「私たちにできること」は何かを必死に考え、毎月のように被災地を訪問し、ライブもしている。彼女たちはこの活動を通してアイドルだからできること、彼女たちにしかできないことをやっている。被災した子がAKB48のメンバーにもなっている。この「物語」はAKB48ならではだ。

 現在、国内のAKB48グループには300人超のメンバーが在籍している。いわば300個のドラマが存在する。それぞれのファンは個々の物語を紡ぐ重要な登場人物である。

週刊朝日 2016年4月8日号より抜粋