また、年2回、OB・OGの大学生を招いた「進路ガイダンス」も開き、生徒からの個別質問に応じている。これらの取り組みは高く評価され、昨年、「キャリア教育に関する文部科学大臣表彰」を受賞した。

 67年卒の同校OB、医師で作家の鎌田實さんは西高時代をこう振り返る。

「3年の夏まで剣道部の活動、映画鑑賞や読書に熱中した。先生は信じて、自由にさせてくれました。おかげで、自分のユニークな個性がつぶされなかった」

 3年になり、やる気になった鎌田さんは、毎朝4時半起きで勉強に励んだ。

「あのときの早起きの習慣は今も続いています(笑)」

 入試では中高一貫校のカリキュラムに利点がある。

「でも、公立には公立の良さがある。部活や行事が盛んなところも多い。都立が元気になってきたことはうれしいですね」(鎌田さん)

 部活や行事が盛んなことでは、東大合格者数都立3位の国立(くにたち)もよく知られる。同校の岸田裕二校長は語る。

「勉強だけでなく、『日本一の文化祭』と呼ばれる国高祭などの学校行事を含めて、すべてのことに全力で取り組む伝統があります」

 モットーは「全部やる、みんなでやる」。80年には野球部が夏の甲子園大会に出場。文武両道校の金字塔だ。

 同校を象徴する文化祭の主役は3年生。夏休みの勉強時間は他の進学校に比して少ないだろう。だが、今後も積極的に取り組ませたいと、岸田校長は力を込める。

「その年の受験に失敗する生徒もいるかもしれない。それでも文化祭をやり切ったという経験が、社会に出てから人間関係を築くうえで大きな力になると思っています」

 卒業生には京大の山極寿一総長、作家の志茂田景樹さんらがいる。

 東大志望が多い都立校の中で、京大志望の割合が高いのも国立(くにたち)の特徴だ。今年は東大合格者20人に対して、京大は半数の10人。一橋大、東京農工大、東京外語大などの志望も多く、バラエティーに富む印象だ。

 日比谷、西に対してライバル意識は?

「当然意識はします。うちも東大合格実績を伸ばしたいとは思います。しかし、最終的には生徒自身が志望する大学に合格する支援をするのが学校の方針です」(岸田校長)

 都の進学指導重点校7校では、情報交換を行っている。さらに日比谷、西の2校は県立浦和、浦和第一女子(埼玉)、県立千葉、県立船橋(千葉)、湘南(神奈川)とともに「首都圏公立進学校交流会」に参加し、つながりを深めている。

 首都圏の公立校はライバルというより、チームの仲間意識があるようだ。

週刊朝日 2016年4月1日号より抜粋