「煎じ薬は、エキス製剤に比べ、生薬の効果を引き出しやすいのが特長です。また、患者さんの体質や症状に合わせてオーダーメイドできる配合の多様性が強みです。個人差はありますが、体質に合った内容だと意外と味も受け付けやすいと聞きます。デメリットは、煎じたあとの湯液は生ものであるため保存に注意が必要なこと、かさばる液体で携帯しにくいこと、患者さんが煎じる毎日の手間が挙げられます」

 エキス製剤のメリット、デメリットは、煎じ薬の裏返しとなる。保存性と携帯性に優れ、外出先でも服薬しやすいことがメリットで、配合が固定されていて患者に合わせて変えられないことがデメリットだ。

 どういう患者に煎じ薬が適しているのだろうか。

 漢方緑川クリニックには、それまでエキス製剤を飲んでいたけれど、十分な効果が得られず、煎じ薬の処方を求めて来院する患者もいるという。緑川医師はこう話す。

「症状が出ている要素に病が限局している一般的なケースでは、エキス製剤の長所が勝ります。一方、慢性化して治りにくくなっている病の根源はもっと奥深いことがあり、そういうケースでは煎じ薬が向いています」

 煎じ薬なら、同じ患者でも治療の段階によって適宜配合を調整し、全身の状態とバランスを考慮して処方できる。煎じ薬を処方する医師は、そのオーダーメイドを重視しており、また、どの生薬をどう組み合わせて治療していくかが医師の腕の見せどころだともいう。

週刊朝日  2016年4月1日号より抜粋