林:吉行さん演じる富子さんって、有名な作家を弟に持っていたという設定じゃないですか。やっぱり山田監督は、お兄さまの吉行淳之介さんのことを思い描いていたんですかね。

吉行:監督のちょっとした遊びかしら。わからないですけど。

林:この映画、吉行さん演じる富子さんが、突然離婚届を突き付けるところから始まるんですよね。

吉行:私と橋爪さんは、今まで何度も夫婦役をやってるんですよ。私のほうがだいぶ年上なのがちょっとコンプレックスなんだけど。ツーカーの古女房という感じでした。

林:離婚をめぐっての家族会議の場面では、富子さんがなぜ夫を嫌いになったか、長ゼリフで明らかにしますよね。ここで世の奥様方に「そうなのよ。わかるわ」って思わせなくちゃいけない。

吉行:私、映画館に山田監督の「母と暮せば」を見に行ったんです。そしたらちょうど「家族はつらいよ」の予告編が流れてきて、「夫といるのが私のストレスなの」という私のセリフでお客さんがキャキャッと笑ったの。ああ、そういう気持ちってあるんだろうなと思って。

林:私も「そうだ、そうだ」と思いました(笑)。共感の笑いが起こるシーンですね。

吉行:最初に「言いづらいことだけど」と言って、それからその言いづらいことをダーッと言うからおもしろくて、どんどんセリフが入ってきました。

週刊朝日 2016年3月25日号より抜粋