和食に合うように…(※イメージ)
和食に合うように…(※イメージ)

 フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、長野県須坂市の「日滝原2014(白)」。

*  *  *

 長野県北部にある須坂市には、「日滝原」と呼ばれる大きな扇状地がある。水はけが良い土壌である半面、農家は干ばつで苦しんできた。かつては稲は育たず、桑の産地だった。日滝原で育った楠茂幸さんが、故郷でブドウを育てて、ワインを造ることを決心できたのも、土地の水はけの良さにあった。ワイン用ブドウはこうした土壌をとりわけ好むのだ。ブドウが生育する期間の気温の傾向が、銘醸地のボルドー地方とほぼ等しいことも彼を勇気づけた。

「日滝原」は、この地で楠さんが育てたセミヨンとソーヴィニヨン・ブランで造られている。有名なシャルドネではなく、この2品種を選んだ理由を楠さんはこう話す。

「出し汁やお寿司の磯臭さを強調しない、この2品種のブレンドなら和食に合うと思ったからです」

 セミヨンのふくよかさは食事を包み込み、ソーヴィニヨン・ブランのすっきり感は、後味を爽やかにする。和食らしい味付けとの相性は抜群だ。

週刊朝日 2016年3月25日号