美少年をモデルにした作品を多数残しているカラヴァッジョだって、ダンゼン男性派。今回の来日作「トカゲに噛まれる少年」のモデルもシチリア出身の美少年画家ですが、丁寧に描きこまれているのがわかります。

 3人とも、女性よりもなによりも、まず才能のありすぎる自分がいちばん好きだったのではないか、というのが私の見立てです。

 展覧会は、ぜひ時代を追って、ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョという順番で見てください。世間のニーズに応える現代漫画界的な状況から、売れなくても自分の描きたいものを描くといったふうに、画家の精神性が移行していく様が感じられると思います。ボッティチェリのような部屋に飾りたくなるような装飾的なきれいな絵もいいけれど、じつは人間ってのは醜いところもあるんだよ、と示すダ・ヴィンチの絵になり、その人に対する見方の容赦のなさがカラヴァッジョでさらに強調されるようになる(笑)。同時に、請け負い職人から個性を強調できる絵描きに、そして芸術家というものになっていく移り変わりも感じられるはずです。

 宗教画がテーマになっていることが多いルネサンス絵画は、日本では崇高なものだと思われがちですが、そんなことはない。たとえばイタリアでは500年前なんて“こないだ”という感覚です。当時の人たちも、いまの私たちも、そんなに変わらないということが、画家たちの人間的な面を知れば知るほどわかるはずです。

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